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ご挨拶
えーと、『皆さん、元気ですか?』
アタシは元気だけど……何、その目。アタシがここにいちゃいけないっていうの?
アタシだって、やりたくてこんなことしてるわけじゃないし。
なんでって……頼まれたから、アイツに。どうしても書けない理由があるけど、穴はあけたくないからって。ほんと勝手だよね、アタシにだって都合ってもんがあるのに。
まあ、引き受けた以上はちゃんとやるけど。
アイツ、日記とかつけてたんだ。アニメかゲームしかしてないくせに、書くことあったのかって感じだけどね。
アイツの今日の一日
そもそもアイツ、おばさんたちが旅行でいないからって羽根伸ばしすぎだったでしょ。
おばさんにアイツを起こすように頼まれてたから、仕方なくアタシが起こしに行ったらリビングで寝落ちてたし。(早く寝ろって言われてたのに。あとでおばさんにチクってやる。)
しょうがないから、起こして朝ごはんも作ってやったのに、着替えに行ってから全然戻ってこないし、味噌汁も冷めちゃうし。
で、めちゃくちゃ嫌だったけど、様子見に行ってやったの。
そしたらアイツ何してたと思う?ベッドで気持ちよさげに二度寝してた。最悪。部屋も汚いし。
でも、今夏だし、虫とか湧いたら事だから、部屋の片づけもしてやった。
あ、くれぐれも勘違いしないでよね。アイツ、部屋もろくに片づけないなまけ者のくせに、虫が出たらうちまで来てアタシに泣きつくんだから、仕方なく。
もちろん、アイツの部屋なのにアタシだけが掃除するとかありえないから、二度寝してるを見た瞬間すぐ蹴とばして起こしてやった。
楽しみにしてる番組をリアタイ出来て助かったとか言われたけど、アイツの好きな番組とか知らないし。
そう言ってもアイツはヘラヘラしてるし、ホントありえないし、ムカつく。
起こしてやってからもアイツは最悪だった。せっかくアタシが作った味噌汁と一緒に、ミスドのドーナツ食べるなっての。
ドーナツを温めるのが面倒だからって、フライパンで焼いてるし。ホント意味わかんないし、キモすぎ。
で、起こしたしご飯も作ったし片付けまで手伝ってやったし、そこで帰ろうと思ってたのに、「昼ご飯を食べていきなよ」って。相手の都合とか考えろっての。アタシが暇じゃなかったらどうしてたんだか。
は?何言ってんの、アタシがアイツのために予定空けておくわけないじゃん。友達が彼氏とデートだからって、今日の予定をドタキャンしたの。
……別に、よくあるでしょ。
言っとくけど、その友達の彼氏って社会人なんだから。大学生のウチらと予定が合うなんてめったにないんだし、デートが優先なんて、当たり前じゃん。
しょうがないよ。
まあでも、アイツは頭いいみたいだけどバカだし根暗だし、そんなこと知ってたわけないけど。
で、出された昼ご飯がこれまた最悪。
おばさんが作っておいて行ってくれたチキンライスがあるから、それでオムライスを作るって聞いてたのに、
それを海苔巻きにしてアタシに出してきて、イラっときすぎて逆になんも言えなかった。キモすぎ。
そうこうしてたらおばさんたちが帰ってきた。
アタシはいいって何回もいったのに、おばさんはおみやげを分けてくれた。
このクッキー、かわいいよね。これ、フチを割ってまんなかのネコを出して食べるんだよ。
だから良かれと思ってアイツに「割って食べるといいよ」って言ってやったの。
そしたらアイツ、真っ二つにして食べてた。
アイツ、思いやりとかなさすぎ。そんなんだから友達がろくにいなくて、たまに出かけたと思ったらキモイオタクとアニメのイベントに行ってるんだよ。
なにがそんなに楽しいんだろうね。
アタシにはこれっぽっちもわかんない。ってか、わかりたくもないし。アイツにはアタシの気持ちなんかわかんないだろうし。
そんなやつの気持ちなんか、わかんなくて当然なんだから。
で、アタシが帰ったあとに、アイツはアタシに、アイツの日記を書いてくれってLINEを送ってきた。さっきまでいっしょのとこにいたんだから、そんなのさっき言えよって感じだよね。
でも、今日一日でアタシはこんなにアイツにいろいろしてやったんだから、これ以上アイツに付き合ってやる必要ないじゃんってアタシは思った。
だから、絶対ヤダって言ってやった。
これで終わると思ってたのにアイツは、どうしてもどうしてもって聞かない。しまいには、聞いてもいないのに、今日の日記を書けない理由をアタシに送ってきた。
笑っちゃうよね。
『初めてできた彼女と、デートするんだ』って。
アイツに彼女なんて。
アイツ、絶対騙されてるよ。
あんな朝もアタシが起こしてやらないと起きられないようななまけ者で、ちゃんとしまわないで床に置きっぱなしの服がいつもよれよれで、ろくに出かけないから世間知らずで、そのくせ興味のあることはベラベラ話すキモいオタクなのに。
最近バイトを始めたはいいけど全然うまくいかなくて、毎日へとへとで家に帰ってきてすぐ眠ってるから心配って、おばさん言ってたじゃん。なんだよ、彼女にプレゼントを渡すためかよ。
ほんとアイツは、アタシのことをなんにもわかってない。
アタシがずっと、アイツのことを好きだったなんてちっとも思ってない。
それでもアタシは、アイツのお願いに答えてしまった。
ほんと、アタシが一番最悪だ……
嘘です!!!!!!!!!!!!!
何もかもが嘘!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
「そんな!?俺がさっきまで読んでた淡い恋愛模様は???」
全部嘘!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
「幼馴染のオタク俺に悪態をつきつつも、幼馴染俺に惚れているばっかりについ面倒を見てしまう隣の家の派手な少女は???」
全部私の生みだした幻覚だよ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!残念でした!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
おわりに
日記書くのダルすぎてつい架空の人格と架空の幼馴染を生み出してしまった。何もかもが嘘です。
卵焼きかと思ったか?????残念!!!!!オムライス巻だ!!!!!!!!!! pic.twitter.com/QPbCYeU52u
— カノッサの屈辱 (@Cannosa1077) 2021年8月14日
でもオムライス巻きは本当です。あとドーナツをフライパンで焼いたのも本当です。
そして自分で書きながら、幼馴染の少女よ、そんなお前の思いに気づいてくれない男忘れて私と幸せになろうよ、と思ってしまった。
でも途中で「私、なに嘘を書いてるんだろう……」という気になってしまった。
というかそもそも今まで、私は小説を全然書けない体質であったことを忘れていた。何を書いていても、途中で上記のような気持になってしまうのだ。二次創作はできる。だが一次創作になると、「私はいま『ないもの』を生み出している……」という気持ちになってしまい、しだいに恥ずかしくなってなにも書けなくなってしまうのだった。
でも今日は書けた(のだろうか、でもそれらしきことはできた)。
いつかはこの羞恥心を乗り越え、もっと素直に気を狂わせていきたいなあと思った。
おわりです。